黒田チカ賞選考委員会委員長
お茶の水女子大学理学部長 吉田裕亮
第1回黒田チカ賞選考委員会は慎重に審議を行った結果、下記の2氏を、黒田チカ賞候補者として本学学長に推薦し了承を得ました。
五十嵐 悠紀 氏(明治大学 総合数理学部 専任講師)
業績「コンピュータを用いたインタラクティブ3次元形状モデリングに関する研究」
五十嵐氏は、平成17年3月に本学理学部情報科学科を卒業し、東京大学大学院情報理工学系研究科 博士前期課程?コンピュータ科学専攻を経て、同大学院工学系研究科博士後期課程先端学際工学専攻を平成22年3月に修了し、博士(工学)が授与された。学位取得後は、日本学術振興会 特別研究員PDおよびRPDとして研鑽の後、平成27年4月に明治大学?専任講師に就いた。
五十嵐氏の主たる研究分野はコンピュータグラフィクスであり、分野的には形状モデリングおよび布素材の特性についての物理シミュレーションにあたる。ユーザインタフェースの学術領域で今まであまり着目されていなかった領域において新たな概念の下にクラフト作成用のユーザインタフェースの研究を行うなど、同氏の研究は国際会議ならびに国際的学術雑誌における発表で世界的に注目されている。自動車など工業製品のスタイリングデザインへの応用の可能性もあり、今後の国際的な活躍が大いに期待される若手女性研究者である。
また、育児と学術研究活動の両立に関しても独創的な発想で対応し、所属学会においては男女共同参画活動を積極的に行なうなど、当該分野における後進女子学生らのロールモデルとしても活躍している。
栢沼 愛 氏(筑波大学計算科学研究センター 助教)
業績「量子計算科学による金属錯体の光異性化反応機構の解明に関する研究」
栢沼氏は、平成16年9月に本学理学部化学科を4年次中途で退学し、本学大学院人間文化研究科博士前期課程?物質科学専攻に飛び級入学をした。博士前期課程を1年半で早期修了の後、平成18年4月には同研究科博士後期課程?複合領域科学専攻に進学し、平成21年3月に 博士(理学) が授与された。
栢沼氏の主たる研究分野は計算化学であり、大学院生時代には高精度分子軌道法による量子化学計算の研究を行った。学位取得後、ストラスブール大学でのポスドク研究員として金属錯体を用いた光触媒系の反応機構の解明ならびに光異性化反応の解明において顕著な研究業績を上げた。また、筑波大学?助教に着任後には、生命物理学研究室との共同で、酵素の反応機構の解明に関する研究を行った。当該共同研究においては、栢沼氏の金属錯体の光触媒の反応機構の解明手法が大きな貢献を果たしている。さらに、最近では分子進化グループとの連携で真核生物のタンパク質合成に関わる研究も始めている。量子化学計算の研究範囲を物質科学から生命科学にまで応用するなど、今後の国際的な活躍が大いに期待される若手女性研究者である。
以上
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