bet36体育在线_10bet体育-【唯一授权网站】@

图片

ページの本文です。

平成28年度卒業式 学長告辞

2017年3月27日更新

平成28年度 学位授与式 学長告辞

本日、お茶の水女子大学を巣立っていかれる493名の皆さま、ご卒業おめでとうございます。また、これまで皆さまの学びを物心両面からお支え下さり、お励まし下さいましたご家族やご関係の皆さまに、お茶の水女子大学の教職員を代表いたしまして、心から御礼とお祝いを申し上げます。
御来賓の皆さまには、お忙しい中、ご臨席を賜りまして、卒業生たちの門出を共にお祝い頂けますこと、まことに有難うございます。

皆さまがご参集下さっているこの徽音堂には、日本の国旗と共に、本日卒業の佳き日を迎えられた留学生の方々のお国の旗も掲げてあります。
留学生の皆さまにとって、環境も習慣も異なる異国の地での生活は、きっととても大変であったろうと思います。お茶の水女子大学で学びたいとの想いを持って留学して来られた方々が、本日、無事に卒業の日を迎えることができましたことを、心より嬉しく思います。皆さまを、本学の卒業生としてお送り出来ますことも、私たち教職員にとって大きな喜びです。今後、母国で活躍の場を求める方もいらっしゃるでしょうし、日本に残って大学院で学ぶ方や就職される方、そしてさらに異なる国に行かれて学びの道を深める方もいらっしゃると思いますが、お茶の水女子大学の卒業生として、それぞれの道を、誇りをもって歩んで頂きたいと思っています。

さて、皆さまもご存知のように、本学は1875年11月29日に、わが国初の女性のための高等教育機関として設立され、一昨年、創立140周年を迎えました。記念式典や様々な行事には、多数の方々にご参加頂き、お祝い頂くことが出来ました。
最初、本学は日本における教育体制の確立と、優れた教育を全国に広めることをミッションに、女子師範学校として設立されました。その歴史の中で、本学の多くの卒業生は、日本の女子教育を担い、知性ある女性たちを育てて来ました。国の女子教育の推進のために学校設立に努力した卒業生も数多く、関東大震災の翌年1924年に本学の同窓会である「桜蔭会」が開設した「桜蔭学園」は、その中でも良く知られた例です。

この140年余の歴史の中で、本学の卒業生は、女性が学術研究に従事することなど考えられなかった時代から、国境を越えた活躍をして来ました。国の内外において学問研究を修め、研鑽を積んで、日本で初の女性理学博士となった保井コノさんや、帝国大学が初めて女性に門戸を開いたときに、初の女性帝国大学生となった黒田チカさん、また、第二次世界大戦前後の極めて困難な時期に、フランスに於いて国際的な原子物理学者として活躍し、日仏研究者の架け橋ともなった湯浅年子さん、女性を受け入れなかった帝国大学で無給の副手として研究を続け、初の女性農学博士となった辻村みちよさん、豊富な海外留学の経験を経て、当時のシャム国―現在のタイ王国です―の女子教育に尽力し、その後東京女子大学の2代目学長を務めた安井てつさん、アメリカ留学の経験を活かして女性の権利向上を訴える活動を広く行うと共に、日中教育文化交流に尽力し、さらに桜美林学園の創設発展に貢献した小泉郁子さん などを先駆けとして、現在までに数多くの科学者?研究者が育ち、国の内外で活動しています。わが国初の女医として知られている荻野吟子さんも、本学を卒業後、幾多の困難を乗り越えて、医師となった方です。
現在も、様々な分野で活躍している女性たちの多くが、本学や本学の附属学校の出身者であることに驚かされます。時には、大きな会議に出席している女性のほとんどが本学や附属学校の卒業生で占められていることすらあります。そういった多くの先輩たちの活躍は、後に続く皆さまにとって、力強い後押しとなってくれることでしょう。
ちなみに、在学中に奨学金や賞を受けられてご存知の方も少なくないと思いますが、同窓会である「桜蔭会」では、素晴らしい先輩たちが、卒業生の様々なネットワークを通じて、若い方々の活躍を支援して下さっています。現在、本学の並びに同窓会館がありますので、何かの折に訪問してみて下さい。

ところで、お茶の水女子大学で過ごされた4年間の、3年次編入の方は2年間ですが、学生生活は、いかがでしたでしょうか。入学前に抱いていた夢や希望を実現することができたでしょうか? 良き友人を得て楽しい大学生活を送ることができた方、十分な学びの成果を挙げて夢を叶えることができた方もいらっしゃるでしょう。でも一方で、悩んだり、挫折を味わったりして、辛い経験を乗り越えてこられた方もいらっしゃるでしょうね。そういったこと全てが、人としての成長を促し、今の皆さまを作っているのです。
今、卒業という節目を迎えて、これまで歩んできた道を振り返り、ご自分たちの成長を確認して頂きたいと思います。そして、皆さまを支えて下さったご家族やご関係の方々に「ありがとうございました、お蔭さまで卒業することができました」と感謝の言葉を伝えて下さい。経済的支援も勿論ですが、皆さまが無事に勉学に励めることを祈り続けて下さったことへのお礼の言葉を、是非、口に出して伝えて頂きたいと思います。

現在、私達を取り巻く社会環境は大きく変動しています。世界中で大規模な自然災害や、困難な問題が起こり、人々の幸せや穏やかな生活が失われている現状があります。
自然災害に目を向ければ、日本でも、この数年間に、2011年の東日本大震災をはじめとして、2011年と2013年の大型の台風の襲来、2014年の広島の土砂災害と御嶽山噴火、2016年の熊本地震など、多くの方が甚大な被害を受けました。これらの自然災害がもたらした悲惨な事態は、私たちに、人知が及ばない自然の力の大きさを知らしめると共に、人々が心を寄せ合い、助け合うことの素晴らしさも強く認識させるものでした。
この間、少なからぬ学生さんや教職員の方々が、被災された方々の痛みに心を寄せて、救援活動や復興支援、教育の継続のための活動にボランティアとして参加して来られたことは、とても素晴らしいことでした。
特に、東日本大震災については、学校の休みを利用して被災孤児や遺児の支援活動に 私たちとご一緒して下さった方々も多数いらっしゃいましたね。継続した被災地訪問を通じて、被災者を支える活動を続けた方々、被災地の子ども達の学修支援に奔走した方々など、多くの学生さんたちや教職員の方々が頑張って下さったこと、そして今も頑張って下さっていることを知るたびに、心からの感動を覚えます。今日、そのような経験を経て卒業の日を迎えている皆さまの姿は、頼もしく、また、輝いています。
多くの人々が悲しみや不幸に見舞われている状況がある中で、皆さまには、日々の普通の暮らしが穏やかに続くこと、人々が信頼し合い手を取り合って暮らせることの大切さを、心に刻んで頂きたいと願います。
そして、大きな社会的な不幸の中で、自分に何ができるかを真剣に考え、また実際に行動することで、これからも弱い立場にある人々への温かい視線を忘れずに、日本と世界の平和と人々の幸せのために、自分たちに何ができるかを問い続けながら、それぞれの道を誇り高く歩んで頂きたいと願っています。

世界の状況に目を向けますと、移民や難民に対する不満、格差の拡大、貧困の固定化など、欧米社会を中心とした世界共通の課題が、世界各国の間で長い時間を掛けて築かれてきた秩序やシステムにほころびを生じさせています。21世紀の世界で生きていく皆さまには、世界が抱えている課題を直視しつつ、でも、社会に溢れる情報に振り回されることなく、本学の教育の中で培った「しなやかな知性」を十分に発揮して、それぞれの立場で、課題解決に向けた努力を続けて頂きたいと願っています。

皆さまの卒業後の進路はさまざまでしょう。引き続き大学院へ進学する方も、また社会の現場に出ていく方もいらっしゃいますね。今日、お茶の水女子大学を巣立って、様々な場へと羽ばたいて行かれるわけですが、どんな道を選ばれるにしても、皆さまには、様々なことにチャレンジする勇気と、失敗しても諦めない強さを持って頂きたいと思います。長い人生では、思いがけないことが起こります。困難な場面に遭遇したり、壁に突き当たったりして、物事が思うように進まないことが少なからずあると思います。人生の谷に差し掛かった時に、諦めたり逃げてしまいたくなったりすることもあるでしょう。ですが、諦めてしまったり、逃げてしまったりしたら、それまでの努力も無駄になってしまいます。チャレンジして失敗することは、決して恥ずかしいことではありません。失敗は、皆さまを強くし、成長させ、将来を拓く力ともなります。是非、諦めることなく目標を目指して飛び続けて下さい。
長く低空飛行を続けなければならないこともあると思いますし、羽を休めなければならないこともあると思いますが、それでも諦めずに飛び続けて頂きたいと思います。そうすれば、必ずまた高く飛べるときが来るはずです。困難に出会って悩み、それを乗り越えた経験は、周囲の人々への思いやりや共感にも繋がりますし、そこから自分自身への誇りも生まれます。
ただ、困ったときには一人で悩んだり苦しんだりせずに、是非、周りの人たちに助けを求めて下さい。皆さまが周囲の人たちを思いやるのと同じ様に、皆さまを思いやり、助けて下さる方がいらっしゃるはずです。
そして、いつでも、皆さまの母校であるお茶の水女子大学に、羽を休めに帰っていらして下さい。辛い時も、悲しい時も、そして嬉しい時も、どんな時も、お茶の水女子大学は、皆さまを喜んでお迎えします。学問の進展に対応して、学びなおしたくなった時や、新たなキャリアを求めて異なる分野での学びを深めたくなった時にも、是非、お茶の水女子大学に帰っていらして下さい。お茶の水の扉はいつでも開かれています。

最後にひとつ、皆さまにお話しておきたい事があります。それは、今日の佳き日をご一緒に迎えることのできなかった一人の学生さんのことです。
その学生さんは、大学院の入学試験を前にして、急な病で亡くなられました。お母さまからは、「一日も早く病気を治して、大学院に進みたい。大学院では、学びたいことがたくさんある。そして将来、お茶の水で学んだことを活かして、人々の役に立つ人になりたい」と、明るく語っていらっしゃったとお聴きしました。ご自分の社会での役割を確かなものとするために、夢をもって、本学の大学院で学びを続けたいと、熱い想いを持っていらっしゃったのに、夢を叶えることなく、旅立ってしまわれたのです。
輝く未来が待っていたでしょうに、、、その学生さんや、ご両親のお気持ちを想う度に、胸が痛みます。
皆さまには、夢の実現のために、また、何事かを成し遂げるために、命を守ることの大切さを、強く認識して頂きたく思います。いつもご自分の体調に気をつけて、どんな小さなことでも気になる事があったならすぐに診察を受けるなどして、病気や怪我などに対応して頂きたいと思います。そして、是非、多様な場で活躍して、夢を叶えて頂きたいと願います。
私たちが皆さまを誇りに思うと同様に、皆さまにも、本学の卒業生であることに誇りを持って、これからの人生を理想高く歩んで頂きたいと願っています。

皆さまの輝かしい未来をお祈りして、お祝いの言葉を結びます。
ご卒業、まことにおめでとうございます。

平成29年3月23日
お茶の水女子大学長
室伏 きみ子