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2017年4月18日更新
本学物理学科卒業生の樋口あやさん(理化学研究所 協力研究員)らの共同研究「若い惑星系に残るガスは塵から供給された-炭素原子ガスの検出で分かったガスの起源-」が発表されました。
夜空を眺めていると、私たちの宇宙や太陽系の誕生や進化について、ついつい思いを馳せてしまいますね。現在の天文学によると、宇宙は約138億年前、太陽系は約46億年前に誕生したと考えられ
ています。太陽系のように、中心の恒星とその周りを公転している天体の集団を「惑星系」といいます。1995年には、太陽系の外にある恒星の周りに初めて惑星が発見され、現在までに、3,500個を超える太陽系外の惑星が発見されています。
惑星系形成の最初の過程で、原始星を中心としてガスと塵からなる「原始惑星系円盤」が形成されます。その円盤内で塵の合体成長や微惑星形成が起き、ガス成分は惑星系形成が終了すると消失すると考えられています。形成された惑星系では惑星ができる際に残った塵や、岩石同士の衝突でまき散らされた塵が円盤状に漂っています。これは「デブリ円盤」と呼ばれ、惑星系形成の最終段階に当たります。
これまで、デブリ円盤にはガス成分は含まれないと考えられていました。しかし、これまでの研究で一酸化炭素分子ガスなどが検出され、その起源について二つの説が提示されました。惑星系のもとになったガス成分が残っているという「残存説」と、一旦原始惑星系円盤のガスが消失した後、残った塵や微惑星からガス成分が新たに供給されているという「供給説」です。両者は水素分子ガスが大量に含まれるか、含まれないかで判別できますが、まだ決着はついていません。
今回、理研を中心とする共同研究グループは、チリ北部のアカタマ砂漠にある「アステ望遠鏡」を用いて、デブリ円盤49CetiとβPictorisに対して電波観測を行いました。その結果、両方の円盤で炭素原子のサブミリ波輝線の検出に成功しました。さらに、円盤内には炭素原子ガスと一酸化炭素分子ガスが共存し、炭素原子ガスの量は一酸化炭素ガスの量の数十倍にも達することが分かりました。ここで、一酸化酸素分子は
紫外線によって炭素原子に分解されますが、その炭素原子は水素分子があると一酸化炭素分子に戻る反応が進みます。円盤内に一酸化炭素分子ガスが少ないということは、水素分子ガスも少ないといえます。従って、“デブリ円盤には水素分子ガスは少なく、主に塵同士、微惑星同士、塵と微惑星の衝突などによって、ガス成分が新たに供給されている”、つまり「供給説」を支持する結果が示されました(図参照)。
理化学研究所プレスリリース(研究成果)2017「若い惑星系に残るガスは塵から供給された-炭素原子ガスの検出で分かったガスの起源-」(新しいウインドウが開きます)